愛と感動の闘病記《最後の一葉》
手術後〜退院
２００２年３月１４日（木）もう歩いてよし
朝６時頃、ネブライザーという吸入をおこなう。タンなどがからまないようにするためだ。
朝８時、重湯（おかゆの液体だけのもの。とてもまずい）と汁だけのみそ汁、リンゴジュースなどの流動食。看護婦さんに手伝ってもらい、なんとか起きて食べることができた。まずいし、食欲もあんまりなかったけど、無理して全部食べる。
あとで聞いたら、術後最初の食事を残さず食べたのは俺ぐらいらしい。勝ったな（誰にだ）。
フラフラと起き上がってトイレへ。足は痛くない。やったね♪
でもカテーテルを入れたせいで小便するとチンチンが痛ぇだよ。水をたくさん飲むといいらしい。
点滴のせいで小便はたくさん出る。まだ畜尿は続いている。
股間は、カテーテル挿管時につけたと思われる薬のせいでちょっとくさい。
また、久しぶりに食事をしたことで便意が催され、たっぷり排出。下痢だけどね。
院長の回診。足の痛みは、ヘルニアの名残のスジの軽い痛み程度。筋肉注射の後がしこりのようになっていて少し痛い。
11時、点滴２本。 午後２時、再びネブライザー。
7時30分、抗生剤点滴。
誰か友達がお見舞いに来てれば、立つときに「ハイジ、あたし歩けない」「なに言ってるの、クララの弱虫！」「ハ、ハイジ見て、私立てたわ…」「クララ…クララが立ってる！」「ハイジー！」「クララー！」「クロスカウンタァー！」と、極一部の人にしかわからないネタをやろうとしたのだが、しばらく誰も来なかったのでお蔵入り。
２００２年３月１５日（金）
朝11時、主治医回診、背中の管を抜く。
手術中の顕微鏡写真４～５枚と、摘出した髄核を見せてもらう。写真はうっすらとした血の海の中なので、はっきりはわかりにくい。
髄核は思ったよりも多く飛び出し、一部軟骨のように硬くなっていたらしいし。それじゃあ痛いわけだよね。
試験管の保存液に付けられたその髄核は、まるで鳥のササミをほぐしたかのように見えた。写真と髄核をもらえないかと聞いたけど、だめだって。
写真は将来的にはもらえるようになるらしいけど。他人の髄核なんて取っておくのかね？ 標本にするのか、捨てちゃうのか？ 一応俺の体なんだけどな。
点滴をやっているためか、尿がおかゆのような匂いがする。尿道の痛みはそろそろなくなってきた。
体が回復しているきざしなんだろうけど、少し熱がある。37℃。
コルセット業者がコルセット代を取りに来たので25,000円ほど支払う。これは会社に請求することで保険が適用になり、後日８割が戻ってくる。“コルセット要”の旨の医師の診断書と領収書が必要。
３月１６日（土）
点滴してるので腕を出して寝ているためか、少しのども痛い。
鏡で見ると右側の手前の方に米粒のような腫れ物ができている。看護婦さんにいってイソジンをもらい、うがいする。
そろそろ暇になりだした。 隣のベッドが新しい人に替わる。
脳梗塞で倒れた人らしいが、イビキがメチャクチャうるさくて眠れない。
多少うるさくても単調なイビキならいいんだけど、不規則なイビキだから気になるんだよね。
歳は60ぐらいで、見舞客からは「先生、先生」と呼ばれていた。何の先生かはとうとうわからなかったが、グレーの髪の毛が寝てばっかりいて逆立っているのでドン・キング（マイク・タイソンとかのプロモーターだった人）みたいだったのが面白かった。
３月１７日（日）
天気はいいが、風が強い。春一番だとか。
体重測定。59.5kg。食っちゃ寝してるわりには太らないね。
右手で作業をすると点滴針の先で血管を突き破りそうでこわい。ちょっとチクチクするし。
ドン・キング先生のイビキはまだまだうるさい。おまけに昼間はお見舞いやテレビでまたうるさい。時々殺意芽生える。
３月１８日（月）
点滴針抜く 今日もいい天気。主治医回診。
木曜日に退院できるとのこと。退院後も２週間は家でゴロゴロしていろとのこと。
昼食時、病衣とコルセットに醤油をこぼして、洗面所で軽く洗う。
夕方点滴針を抜く。シリコン製で長さ５cmぐらいあるやつだった。
ドン・キング先生のイビキはまだまだうるさい。
３月１９日（火）
久しぶりに頭だけ洗わせてもらう。さっぱりした。ほんとは股間も洗いたいんだけどね。
ドン・キング先生のイビキはまだまだうるさい。
３月２０日（水）抜歯
朝、髪をとかしていて白髪３本見つけて驚く。どうりでおじちゃんも年をとるわけだ。あーはっはっは。
主治医回診、抜糸する。糸を抜いているというより、プチンプチンと切っているような感じだった。
ずいぶん暇である。ひげを剃ったり、空を見たり。指輪物語の１巻読み終える。
夜、ドン・キング先生のイビキが輪をかけてうるさい。
さらにその向こう側に入ったオヤジが「うるせぇなあ！」と言いながらベッドの柵を蹴っ飛ばしたりするのでよけいにうるせぇ。
柵を蹴っ飛ばしてたオヤジはとうとう看護婦に怒られてたけど（笑）、 その気持ちはわかる。
眠いんだけど、眠らせてもらえないんだからその苦しみは拷問並。俺をかまってくれるなら、俺にかまってくれるなら、行かせて天国へ！ 気分はノイローゼ・ダンシング。
３月２１日（木）退院
ほとんど眠れなかった拷問のような夜も明け、いよいよ退院である。今日もいい天気。退院日和である。
朝飯を食った後、残ったテレビカードを使い切り、服を着替えて荷物をまとめ…。今日は春分の日で祝日のせいか、看護婦さん一人、ヘルパーさん一人ぐらいしかいなかった。
ほんとは他にももっとやさしくしてくれた看護婦さんやヘルパーさん達にも挨拶したかったんだけどしょうがない。
「お世話になりました」と告げて１階の窓口へ。
荷物を預けてお金を下ろしに行き、支払って晴れて退院！
お金は最初に支払った保証金を含めて15万円ちょっとだった。手術費、入院費、薬代全部含めてだから案外安かったように思う。2～30万円かかるかと思ってたのに。
その他にコルセット代に25,000円かかったが、前述のとおり会社に申請することで保険が適用されて８割が返ってくる。
久しぶりのシャバ。久しぶりの入浴。久しぶりのビール。久しぶりの栄養のなさそうなコンビニ食。とにかく疲れました（ドン・キング先生のいびきで眠れずに）。もちろん痛度０。
